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歯医者での嘔吐反射を抑える対策|静脈内鎮静法と日常でできる工夫
歯科治療中の「オエッ」に悩んでいませんか?
歯の型取りで気持ち悪くなる。
器具が喉に当たると反射的に吐き気がする。治療を受けたいのに、この不快感のせいで歯科医院から足が遠のいてしまう。そんな経験をお持ちの方は少なくありません。
この「オエッ」となる現象は「嘔吐反射(おうとはんしゃ)」と呼ばれ、口腔内への刺激に対する体の正常な防御反応です。誰にでも起こる現象ですが、反応の強さには個人差があり、中には治療そのものが困難になるほど強く反射が出る方もおられます。
当院では、こうした嘔吐反射が強い方でも安心して治療を受けていただけるよう、静脈内鎮静法を中心とした複数の対策を用意しています。治療への恐怖心や不安を和らげながら、必要な処置を進めることが可能です。
嘔吐反射が起こる仕組みと原因
嘔吐反射は、舌の奥の部分、咽頭部、上あごの口蓋と呼ばれる部分などへの刺激によって誘発される反射です。
異物が体内に入るのを防ぐための防御機能であり、それ自体は決して悪いものではありません。ただし、歯科治療では診療器具がこれらの部位に触れる機会が多いため、嘔吐反射が起こりやすくなります。

身体的な要因
口腔内の異物に対する体の反応として、嘔吐反射は生理的に起こります。
咽頭が狭い方や、日常的に口呼吸をしてしまう方などは、嘔吐反射を起こしやすいとされています。型取りの材料を乗せるための器具や回転切削器具が上あごや舌に当たることで、反射が誘発されるケースが多いです。
心理的な要因
過去の歯科治療でトラウマを持ち、極度の恐怖心から反射的に吐き気に襲われることもあります。
歯科治療に対しての不安や緊張、過去の不快な治療経験などの心理的な要因がきっかけとなることも少なくありません。歯科材料や消毒薬の臭い、歯科治療への不安感や恐怖心から嘔吐反射が誘発される場合もあります。
つまり、嘔吐反射は一概に物理的な刺激によってのみ引き起こされるものではないのです。この点は歯科治療時の嘔吐反射に対処する上で極めて重要なポイントとなります。
静脈内鎮静法によるリラックス治療
当院が最も重視している対策が「静脈内鎮静法」です。
血管内に安定剤を点滴して鎮静状態(眠っているような状態)を誘導しながら治療を行う方法で、局所麻酔とは異なり、痛みだけでなく不安や恐怖、緊張などの心理的なストレスも和らげる効果が期待されます。

静脈内鎮静法の特徴
鎮静中は、夜に眠っている状態と同様に自分で自然に呼吸ができます。
一般的な静脈内鎮静法は「うとうとする程度」とされます。しかし、当院では、嘔吐反射が強い方でも一切の不快感を感じないよう、さらに深い『ぐーぐーと寝ている熟睡状態』に近いレベルでコントロールすることを目指しています。「気づいたら型取りも終わっていた」という体験を提供できるのが当院の特徴です。
どんな方に向いているか
歯科治療時の恐怖心や不安が強い方に適しています。
嘔吐反射があり、通常の治療が困難な方、痛みに弱く、過去の治療でトラウマがある方、一度に多くの治療を終えたい方(短期集中治療との併用)などに有効です。過去のトラウマ、パニック障害、嘔吐反射、聴覚過敏などの様々な理由や背景がある患者さんの治療を多数行っています。
静脈内鎮静法には健忘作用があり、治療中のことをあまり覚えていないという効果もあるので、治療時間がとても短く感じる患者さまがほとんどです。悪い記憶として残りにくいのもメリットです。
安全性と管理体制
静脈内鎮静法は安全性が非常に高いため、歯科治療の現場だけではなく、内視鏡検査などでも用いられることが多い術式です。
全身麻酔の場合は呼吸も麻痺するので、人工呼吸や気管内挿管といった呼吸管理が必要となります。ですが、静脈内鎮静法では、自発呼吸が可能な状態なので、呼吸管理の必要はございません。また、ストレスなどによる血圧の上昇や心臓への負担がなくなり、身体的に安定した状態で治療を受けて頂くことができます。
治療中は、常に、医科の現場でも全身管理の研修を受け、麻酔技術を研鑽してきた院長が、血圧や心拍数などの全身状態をリアルタイムで管理しています。
日常でできる嘔吐反射対策
静脈内鎮静法以外にも、患者さんご自身で実践できる対策があります。
これらを組み合わせることで、嘔吐反射を軽減できる可能性が高まります。

事前に伝えることの重要性
嘔吐反射が強い旨を歯科医院に伝えていただくことが一番大切です。
歯科の多くは当院のように嘔吐反射が強い方に対する対策方法をそれぞれ持っていると思います。その対策を講じてもらうためにも問診時や問診票にて嘔吐反射がある旨を伝えましょう。
正しい呼吸法を心がける
「鼻から吸って口から吐く」方法が有効です。
この呼吸法は体をリラックスさせる効果があると言われており、自律神経を正常に保つために有効と言われています。さらに腹筋に力を入れることで、吐き気を抑制することができると言われています。
リラックスを心がける
嘔吐反射が心理的要因の場合、極度な恐怖心が嘔吐反射を引き起こします。
「怖い」という気持ちはなかなか消えないかもしれませんが、気持ちの上で必要以上に怖がらないよう心がけることで、恐怖心が抑えられることもあります。音楽を聞きながら治療を受けるなど、リラックスした気持ちで治療に臨めるように工夫してみましょう。
我慢しないこと
吐き気を覚えたり、辛くなったら我慢せずに手を挙げて知らせましょう。
先に「嘔吐反射がある旨」が歯科医師側に伝わっていれば、手が上がれば察してくれるはずです。無理に我慢をしているとその後の中断時間が伸びたり、さらなるトラウマにつながることもありますので、その都度知らせて手を止めてもらうことも大切です。
歯科医院側で行う対策
当院では、嘔吐反射が強い方に対して複数の対策を用意しています。
患者さんの状態や治療内容に応じて、最適な方法を組み合わせて対応します。
小さな器具を使う
回転切削器具や型取り用のトレーを小さな物にすることで異物感が少なくなり、嘔吐反射を起こしにくくします。
ヘッドの部分が小さいものを使います。器具の面積を小さくなることで嘔吐反射の引き金となる部位に触れる可能性を低くします。特に型取りの不快感は、型取り用のトレーを小さくすることで大幅に減らすことができます。
吸引管を使用する
排唾管という管を口にかけ、水や唾液を常に吸いながら治療することで、嘔吐反射を軽減します。
排唾管と呼ばれるくだをお口の端にかけながら治療を行います。これにより水や唾液が常に吸引される状態になるため、嘔吐反射を減らすことができます。
口腔内スキャナーを活用する
歯医者の治療時に嘔吐反射が一番、起こりやすいのは「歯型取り」の時です。
独特な臭いのするシリコーン製の印象材をお口いっぱいに含まなければならないだけでなく、金属製の印象トレーが喉の奥を刺激することもあります。現在では、トレーや印象材を使わず、データ上で歯の形を測定する光学式の口腔内スキャナーというものがあります。これにより、型取りの材料の不快感を軽減し嘔吐反射を減らすことができます。
ただし、口腔内スキャナーのスキャナー部の部分にある程度大きさがあり、完全に口腔内に当たらない訳では無いので不快症状を完全に0に出来るかは個人差があります。
上体を起こして治療
上体を少し起こした状態で治療することで、嘔吐反射が起こりにくくなります。
治療時の姿勢を工夫することも有効な対策の一つです。
口蓋への麻酔
舌に近い部分や、上あごの口蓋と呼ばれる部分に表面麻酔や浸潤麻酔をすることによって感覚を麻痺させ、苦痛を減らすことができる可能性があります。
ただしこれは上手くいくかどうかは個人差があります。
短期集中治療との組み合わせ
静脈内鎮静法は、通院時間が確保しにくい方のための短期集中治療にも活用されています。
1回の診療枠をゆったりと確保し、複数本のむし歯治療やインプラント治療を一度に進めることができます。長時間の治療に伴う身体的な負担を軽減するためにも、静脈内鎮静法が用いられることが多いと説明されています。

短期集中治療のメリット
通院回数を大幅に減らせます。
仕事や家事で忙しい方、遠方から通院される方にとって、治療期間の短縮は大きなメリットです。また、何度も治療を受けるストレスから解放され、精神的な負担も軽減されます。
当院の取り組み姿勢
当院は、痛みや不安への配慮を治療全体の基本方針とし、患者さん一人ひとりの状態や要望に丁寧に向き合っています。
静脈内鎮静法や短期集中治療の提案は、単に治療回数を減らすだけでなく、患者さんの生活スタイルや心身への負担を最小限にすることを目的としています。治療前の詳しい検査と丁寧な説明を重視し、患者様との「情報共有」を診療の基本としています。
よくある質問
Q1. 静脈内鎮静法は保険適用されますか?
当院は自由診療(自費診療)のクリニックです。そのため、静脈内鎮静法を含め、すべての治療が自由診療となります。
費用については、短期集中治療の範囲や治療内容によって異なりますので、カウンセリング時に詳しくご説明いたします。
Q2. 治療後すぐに帰宅できますか?
治療後は30分から1時間ほどリカバリーの時間が必要ですが、当日中に帰宅することが可能です。
ただし、効果が薄れる時間には個人差もあり、治療後もしばらく眠気が残ったり体がふらついたりする患者様もいらっしゃいます。その場合は無理せず、しばらく安静にしてからご帰宅いただきます。治療当日は自転車・自動車などのご自身での運転はできません。
Q3. 全身麻酔との違いは何ですか?
静脈内鎮静法が穏やかな鎮静状態をめざすのに対し、全身麻酔は患者さんが意識をなくした状態で治療を進めます。
静脈内鎮静法では自発呼吸が可能な状態なので、呼吸管理の必要はなく、入院も不要です。全身麻酔を行うには、施設や薬剤の要件があるため、一般的な歯科医院では難しいことが多く、大学病院等への紹介という形が多くなります。
Q4. 嘔吐反射が強くても必ず治療できますか?
静脈内鎮静法を用いることで、多くの場合は治療が可能になります。
ただし、様々な手段を試してもどうしても無理な方への最後の砦として、全身麻酔下での治療という選択肢もあります。完全に無意識下での治療になりますが、大学病院等へのご紹介という形になることが多いです。
まとめ
嘔吐反射が強くて歯科治療を諦めていた方も、静脈内鎮静法を用いることでリラックス状態で処置を進められます。
当院では、静脈内鎮静法を中心に、小さな器具の使用、口腔内スキャナーの活用、吸引管の使用など、複数の対策を組み合わせて患者さんの負担を最小限にする努力をしています。短期集中治療との組み合わせにより、通院回数を減らしながら必要な治療を完了することも可能です。
嘔吐反射に悩まされている方は、一度ご相談ください。患者さん一人ひとりの状態や要望に丁寧に向き合い、最適な治療方法をご提案いたします。治療への一歩を踏み出すお手伝いをさせていただきます。
ゴールド麻布デンタルクリニックでは、静脈内鎮静法による安心・安全な歯科治療を提供しています。嘔吐反射でお悩みの方、歯科治療に不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
【著者情報】
著者・監修:川淵 元貴(かわぶち もとき)
ゴールド麻布デンタルクリニック 院長/歯科医師

九州歯科大学卒業後、都内医療法人や病院歯科口腔外科にて研修・勤務。審美歯科治療、インプラント治療、咬合再建、静脈内鎮静法を用いたリラックス治療など、自由診療を中心とした幅広い臨床経験を積む。
2017年、東京都港区南麻布にゴールド麻布デンタルクリニックを開院。歯科治療に不安や恐怖心を抱える患者さまにも安心して通院していただけるよう、静脈内鎮静法や短期集中治療を取り入れた診療体制を整えている。
現在は「痛みや不安に配慮した歯科医療の提供」を理念に、精密で丁寧な治療とわかりやすい説明を大切に診療を行っている。


